家づくりのバイブル
目次
――――――――――――――――――――――――― 1章 断熱の話 冬暖かく夏涼しい家にしたい! ――――――――――――――――――――――――― 外断熱にこだわらなくて良かった ●地域差を考えて ●建物の気持ち ●内断熱と外断熱 断熱材ってどんなもの? ●おばあちゃんのお気に入り無電気ざぶとん ●一長一短・現場の悩み ●セーターとヤッケ ●地域によって断熱の目安は違う 断熱効果があるのは断熱材だけじゃない ●障子は日本の二重窓 ●木と紙と土と空気の家 ●小学校にエアコン? ●西日対策は植物で 高断熱・高気密住宅は一日中窓をあけないの? ●24時間機械換気はどの家でも必要? ●窓をあければいいんじゃない ●風がぬける家 ●熱交換型換気扇とは ●換気扇の掃除してますか? 結露のない家に住みたい ●温度差のない所では結露は起きない ●結露とは? ●ひどい結露がカビを招く ●温度と湿度と結露の深~い関係 ●住まい方で結露を減らす ●室温18度では寒いですか? ●冬の夜は寝る前に窓をあけて! ●快適さを求め過ぎると ●結露のなかった時代 ●結露がなくなった? ●断熱も気密もほどほどに ――――――――――――――――――――――――― 2章 構造の話 地震に強い家が欲しい! ――――――――――――――――――――――――― 構造は何で決まる? 普通の木造では地震に弱い? ●木造(在来工法)の地震対策 在来工法って何ですか? ●普通の木造住宅 ●木造伝統工法 ●上棟式(建前) 在来工法ならリフォームも楽 ●土台だけ取り替えたい ●孫がハイハイできる家にしたい ●リフォームの悩み べた基礎でなければ弱い? ●べた基礎と布基礎 ●とにかく基礎は大きく高く? 地盤改良は本当に必要? ●地盤を見極めるには? ●軟弱地盤とは? ●地盤改良とは? 柱のない大きな倉庫が欲しい(鉄骨造) ●鉄骨造なら火に強い? ●大きな空間がとれる鉄骨造 ●現場に搬入されてからでは遅い! 鉄筋コンクリートの家は建築費が高い? ●打ちっぱなしの大空間はローコスト ●鉄筋コンクリートの家の良い点と問題点 ――――――――――――――――――――――――― 3章 設計の話 家づくりは楽しまなくちゃ! ――――――――――――――――――――――――― 家づくりは楽しまなきゃもったいない! ●自分の生活スタイルを見直す ●設計者をどうやって選んだらいい? ●相性が大切 ●子どもはすみに置けない? なぜ自宅で打ち合わせをするの? ●自宅を訪ねると新しい発見がある 設計者に頼むと時間がかかる? ●注文の多い建主 ●とことん建主と向き合う ●完成までに1年もかかるの? ●最初の見積もりが大事 ●建主への質問項目 設計者はとことん建主側に立つ代理人 ●お金の流れが品質を保証する ●設計料とは? ●見積りのチェック ●現場の監理 ●設計料の話 設計者はローコストの知恵袋 ●希望と予算のバランスが大事 ●予算が少なくてもあきらめないで ●坪60万で建てられますか? ●建築費以外の諸費用 ●本当のローコスト住宅とは? ●寿命の長い家こそローコスト ――――――――――――――――――――――――― 4章 敷地の話 敷地を読まずに建てられる? ――――――――――――――――――――――――― 隣はなぜ大きく建てられるの? ●隣り合った土地でも法律が違う ●住む地域によっても法律が違う ●家の外の法規制 ●家の中の法規制 ●土地探し ●この辺は昔、水が出ませんでしたか? 敷地の再発見 ●敷地の周辺を歩く ●風景が違って見えてきた ●西側に大きな窓なんて ●敷地が平らでないと建てられない? 狭い敷地を広く使うには? ●壁を共有する ●現在版縁側で家の内外をつなぐ ●敷地を共有して駐車場を確保 ●子ども部屋の共有「みんなの部屋」 間取り図だけでなく断面でも考えるのがプロ ●斜めに広げる「対角線の魔術」とは ●ひき算かけ算すれば広がりが ●透明な窓から広がりが ●台所を広げたい 南向きばかりが理想? ●日陰の良さを見直してみませんか? ●北の部屋のほどよい明るさ 工夫しないと近所づきあいも難しい ●北の庭 ●通る車に存在感をアピール やっぱり家相は気にした方がいい? ●仏壇を踏んじゃいけない? ●地鎮祭で土地の生き物への挨拶を ――――――――――――――――――――――――― 5章 憧れの話 絶対に欲しい!だけで大丈夫? ――――――――――――――――――――――――― 吹き抜けが欲しい! ●でも吹き抜けは寒い? ロフトが欲しい! ●ハイジみたいに眠りたい ●ロフトは面積に入らない? ●明るい隠れ家 ●でもロフトは暑い? 地下室が欲しい! ●でも地下室ってじめじめする? ●長所と短所 ●地下室を快適空間にするには? 出窓が欲しい! ●出窓なら床面積に入らない? ●地域や隣家との関わりも考えて ●出窓の使い方・見せ方 ウォークインクローゼットが欲しい! ●収納が足りないから片付かない? ●寝室に付けるのが当たり前? ●収納はどこにつくるかが大事 ●洗面・浴室とセットなら2階も快適 ●「ぶら下げる+放りこむ」収納 ●チェックポイント トップライトが欲しい! ●でもトップライトは暑い? ●トップライトは採光・換気に効果大 ●光を和らげたい時は? 自然素材を使いたい! ●フローリングなら無垢の木? ●無垢材の塗装 ●乾燥はお肌の大敵 ●破れない障子にできませんか? ●和紙だからこそ ●自然素材はおおらかな気持ちで ●土佐漆喰の家 ●自分で塗れる珪藻土 ●和紙を張ってみませんか? ――――――――――――――――――――――――― 6章 暖房の話 床暖房はほんわか快適 ――――――――――――――――――――――――― ●掘りゴタツで床暖房? ひなたぼっこの暖かさの秘密とは? ●快適なのは輻射熱だから ●室温18度でも快適? ●「欠点」もある? 床暖房のいろいろな方式 ●熱源を何にするか? ●ソーラーでほんわか土間蓄熱床暖房 床暖房は無垢材でも大丈夫? ●ローコスト無垢板を使う ●低温式床暖房 小さな床暖房 ●キッチン ●洗面やトイレ ――――――――――――――――――――――――― 7章 設備の話 便利機器はほんとに便利? ――――――――――――――――――――――――― 流行に惑わされないで ●高級だと機能は良くなるの? ●ずっとおしゃれに使えますか? ●特注のローコストキッチン ●カウンタートップは何がいい? ●食洗機は自由に選べない? ●こだわりの浄水器や水栓を付けたい ●今や旧式? ●今年の流行? ●食洗機を入れても手洗いを続けます ●システム化粧台が欲しい 便利機器は本当に便利? ●人感センサー ●電動シャッター ●手間いらずの便器 ●洋便器とウォシュレット ●ユニットバスはカビない? 台所から火が消える? ●ガスかIHヒーターか? ●IHヒーターは安全で掃除が楽? ●電磁波の心配はない? ●オール電化の「オール」は必要? ●エコキュートは空気でお湯を沸かすの? ●火を扱えない子どもたち ――――――――――――――――――――――――― 8章 長生きの話 長生きする家ってどんな家? ――――――――――――――――――――――――― バリアフリーって手すりを付けて段差をなくすこと? ●誰もが車椅子になるわけではない ●家の中では「這って」でもいいのでは? ●設計者のかん違い ●バリアフリーはまだ必要ない? ●広くないとバリアフリーは無理? ●13坪でもバリアフリー住宅 ●生きる意欲を高める住まい ずっと住み続けられますか? ●設計次第で長く住み続けられる ●敷地が半分になっても住み続けられる? ●引っ越さずに済んで良かった バリアフリーは住まいの中だけ? ●おばあちゃんの姿が見えなくなった ●外が見えない住まいはさびしい ●地域に開放した部屋 住宅の寿命って本当は何年? ●土地や住み手にあった材料・工法で ●つくり過ぎないこと ●住まい方によっても寿命は変わる ●家に手をかける喜び ●メンテナンスフリーなんてない! ――――――――――――――――――――――――― 木の家 ―――――――――――――――――――――――――
まえがき
「家に帰るのがうれしくて。第二の新婚時代みたいですよ」
「私、料理がこんなに好きだとは思わなかったわ。キッチンに立つことが楽しくって」
定年間近で建て替えたご夫婦の言葉です。家をつくるお手伝いをした設計者にとって、家族が新居で楽しく暮らしているのを見ることくらいうれしいことはありません。
ご夫婦の要望は「外断熱で省エネの家」でした。本を読んだり展示場に行ったりして、これこそ家が快適になると思ったとのこと。でも家はそれだけでできるわけではありません。何十年も住み続ける家を、一時の思い込みで建ててしまって良いのでしょうか。年月を経て日本の風土や暮らし方から生み出された工法や材料を、見直してみることも大切なのではないでしょうか。
設計者としての経験や知識をフルに使って、暮らしやこれからのことを話し合うための材料を提供したり、提案していく中で、ご夫婦は家づくりには様々な要素があることがわかっていったようです。家ができていく喜びを、職人さんたちと共に体感できたのも良かったようです。
本書では建主の思い込みを取り上げ、「これだけはぜひ知っておいてほしい」という家づくりの基本や考え方のポイントを書きました。全体の流れ(章構成)は断熱の話から始まり、構造・設計・敷地・憧れ・暖房・設備・長生きと続きますが、どこからでも気軽に読んでください。
コーヒーカップの印のあるところは建主と私たち設計者が交わしているふだんの会話です。家づくりに寄せる様々な思いを読み取って頂けましたら幸いです。