家づくり「気分一新」のリフォーム

著者
女性建築技術者の会
出版年月
1998年12月
出版社
講談社
ISBN-10
4062690462
ISBN-13
978-4062690461
定価
1,680円

目次

第一章 子どもと向き合い、子どもとともに成長する家

 家族とともに成長する家
 子どものテリトリーと約束事
 共働き家庭の子どもの自立
 大人の居場所、子どもの居場所
 キャリアウーマンの子育て
 セミ・オープンの子ども室

第二章 食卓で家の「芯」をつくる

 大きなテーブルが家の主役
 来客もダイニングキッチンヘ
 お弁当づくりは楽しく!
 「見せない」キッチンから「見せる」キッチンヘ
 キッチンこそが子育ての場

第三章 どんなに狭い家でも広く感じることがある

 同じスペースの三軒、暮らし方でこんなに間取りが変わる
 少ない仕切りで大らかに暮らす
 ダイニングテーブルは朝日のあたる場所に
 コンパクトにこだわった住まいづくり

第四章 気分一新の暮らしを求めた「家事」と「収納」

 家庭科の先生の理想は
 いくつもの顔をもつLDK
 家の外にも家事空間がある
 「捨てる」からはじまる収納対策
 共働きでも「趣味」を楽しむ時間づくりを

第五章 だれもが喜ぶサニタリーのリフォーム

 庭を眺めながら入る檜の浴室
 再スタートのキッカケは水まわりから
 親子で入るゆったりとした風呂
 目を悪くした母のためのサニタリー
 洗濯機はどこに置く
 「日なたぼっこ」というあだなの家

第六章 新しい家族、これからの家族

 母と娘、共に暮らすためのリフォーム
 親子の会話がはずむ「家づくり」
 二つのキッチンの効用
 二世帯完全同居の家族の暮らし
 アメリカンスタイルに憧れた一人暮らし
 やさしい暮らしって?

第七章 人生のアフターファイブの住まい方

 母の指定席をつくりたい
 「安心して暮らせる」が元気の源
 夫婦二人の終の住みかに

第八章 家も長持ち、人も長持ち

 曳き家をしました
 木の寿命を全うさせるために
 日ざしと風と家族が集う住まい
 メンテナンスを考えぬいた手芸家の住まい
 「住み継ぐ」ことの大切さ
 環境ホルモンフ?室内空気環境を考える

あとがき
執筆者自己紹介

はしがき

私たち女性建築技術者の会は、建築に関連するさまざまな職業を持つ女性達を会員としていますが、住宅の設計に携わっている会員達の集まりで、リフォーム設計の件数がだんだんと増えてきているという声が開かれるようになりました。

ちまたではリフォーム産業が急成長とか。なぜこんなにリフォームが増えてきたのでしょうか。単純に新しい住まいが手に入りにくくなっているせいばかりでもないようです。実際に、築年数が五年末満の住まいでもかなりのリフォーム希望があるというデータが、情報誌のアンケート調査によって出ています。

また、リフォームの動機として、「建物や設備の老朽化」と並んで「より快適な住まいを実現できる」が大きな割合を占めており、従来考えられてきた「家族構成の変化、建て替えより費用がかからない」といった動機は意外に少ないとも開きます。(東京都住宅局『中古住宅およぴリフォームに関する意識調査』)

「リフォーム」という言葉には、いわゆる増改築や修理交換という意味に加えて、もっと積極的に、あるいはもっと切実に住まいを豊かにしたいという意味が込められているのではないでしょうか。「快適な住まい」とは安全で健康的で機能的であることのほかに、家族のつながりやその歴史、暮らしに対するこだわりといったものまでを包み込んでくれるものだと思います。

この本では住み続ける(建物として長らえる)ため、家族の関係をつくる、あるいは続けるため、そして新しい暮らしを試みるために行ったリフォームの実例を紹介しています。私たちが設計者として施主に生活提案をし、自分探しを手伝い、十軒十色にまとめたリフォーム例です。私たちが考える設計という仕事は、施主がどんな住まいを欲しがっているのかをいっしょに探ることです。 自分たちはどんな暮らしをしたいのか、そのためには住まいの中で何を大事にし、何を捨てなくてはいけないのかを形にしていくのが設計です。もちろん図面を描き、確認申請を代行し、見積書をチェックして工事を監理もしますが、それ以前の打ち合わせにじっくりと時間をかけたいと思っています。

ですから、私たちが設計者として加わることによって、建て替え計画がリフォームになったり、洋室希望が和室になったり、思いがけない部分をリフォームすることになったりという計画の変更もありました。たとえひと部屋のリフォームであっても、住まい全体、暮らし全体を考えることから始めていくと、意外なところに新しい答えがみつかることがあるからです。

さらにまた、「暮らし」そのものも時代とともに大きく変化しっつあります。高齢化や少子化、女性の社会進出によって、長男夫婦が家を引き継ぎ、親と同居して、嫁が一手に家事を引き受けて老人介護をするといったパターンは減ってきました。各世代のひとり住まい、母親と暮らす娘、互いに介護し合う夫婦二人暮らし、子どもを含め家族全員で家事をする共働き家庭など、さまざまな「暮らし」のバリエーションがでてきました。さらに近頃では家の中から化学物質を除いた健康的な住まいが求められたり、歴史や思い出の染み込んだ古い家を大切に住み継ごうという流れも見られます。

「暮らし」のまっただなかにいて、生活者の視点を持ちつつ設計者としての仕事を全うしたいと願う私たちにとつて、この時代に「住まい」にかかわることができるのは、新築であれリフォームであれ、たいへん幸運なことかもしれません。

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